浮かびあがろうとする心と・・・
深く深く沈みこもうとする心・・・
2つの心の狭間で揺れ動き、翻弄され、常に不安定で身動きが取れず
もがき苦しんでいる
その頃の私は・・・
彼を救えると思っていた。
その苦しみの渦から彼を救えるのは自分だと・・・
今にして思えば傲慢な思い違いをしていた。
彼の心に潜む闇の深さと苦しみは
誰がどうにか出来るほど、たやすいものではない事を
その頃の私はまだ知らずにいた。
このまま永遠に彼に包まれていられたら・・・
私はどんな事でもするだろう・・・。
けれど・・・
彼の温もりに触れている瞬間でさえ、私の中の不安は消えない。
むしろその温もりを感じれば感じるほどに不安は増していく・・・。
彼は・・・危ういほどの儚さを常に身にまとっているから・・・。
ふと気がついたら波が作る泡のように私の前から消えてしまいそうな・・・
砂が指からこぼれ落ちるように、サラサラと音なき音をたてながら・・・・
そんな不安を拭い去る事が出来ない。
今も、これからもずっと・・・私はその不安に押し潰されそうになる自分と
戦い続けねばならないだろう・・・。
彼と私は互いの気持ちを確認し・・・禁じられた恋へと落ちて行った。
彼への想いは尽きることなく私の心に溢れ、その想いに溺れそうになったが
かろうじて守るべき分身達の存在が歯止めとなった。
その頃の彼はひたすら私を追い求め、視線は常に私を追い・・・
私は彼の視線を感じる度に、言い知れぬ心地よさを感じ・・・
密かな恋は、大切な大切な秘め事として互いの心の奥底で育まれた。
逢いたい
その温もりに触れたい
お互いの中で日増しに強くなっていくその想いをひた隠し
時折その視線を絡ませる事で互いの想いを確認し合った。
秘め事ゆえの切なさ・・・。
けれど秘め事ゆえに蜜のように甘い誘惑に勝てるはずなどなく・・・
想いは体を重ねる毎に強く、激しくなっていった・・・。
本来私の居場所となるべき相手は
私を理解しようとはしない。
理解して欲しいと願う気持ちも最初はあったが
努力をしてもそれは無理だと感じるようになった。
長い間共に暮らしてきたが、その思いは日増しに強くなり
いつの時点からか・・・
お互いがお互いを見る事はなくなり
お互いがお互いの人生を生きるようになった。
その事に対して一抹の寂しさは覚えるものの
これといった不満はなかった。
そこは私の居場所ではなかったのだから。
むしろ私にとって寂しさの代わりに手に入れた自由の方が
大切だった。
それは相手も同じであろうと思う。
けれど・・・・
私にとって本当に心安らげる居場所を見つけたいという思いが消えたわけではなく
私の心は常に・・・居場所を求めて宙を舞う状態となった。
どんなに楽しく笑っていても
どんなに多くの人の中にいても
決して埋める事の出来ない孤独と
その孤独から逃れられる事はないという絶望
そんなものを抱えながら一生を過ごすのかと思った時
言いようのない悲しみに襲われた。
だが・・・
私は彼に巡り逢った。
長い長い時を経て、やっと自分の居場所を見つけた。
彼こそが私の居場所に他ならないと感じずにはいられなかった。
彼にとっても同じであると
同じであって欲しいと願いながら・・・・。
居場所のなさを感じるのか・・・。
いつから・・・?
わからない。
けれどそれは確実に、常に私の中にある。
そして・・・
絶対的な存在を信じたいのに見つけられずにいる失望感
おそらくそれは自分にとって永遠に絶対的な存在であるべきものに
裏切られ、捨てられた経験からくるものなのかもしれないが
実際にはもっと・・・
もっと前から私の中にあったものなのかもしれない。
彼の中に私が垣間見た孤独の理由がどこからくるものなのか
確実な事は分からない。
だが・・・
恐らく彼も生きてくるどこかで何かを失ったに違いない。
そして同時に自分の居場所をも失ったに違いないと私は感じていた。
そして・・・・
私の居場所は彼の中にあり
彼の居場所は私の中にあると
何故か確信した。